基本理念

  2020年現在、世界的に拡大している新型コロナウィルス感染症を今後どう予防していくかが、学校教育の喫緊の課題になっている。9月以降感染症拡大が収まってきた頃に、感染症の第2波が来て不安定な休校措置が少しでも実施されないようにするためには、子どもたちが主体的・対話的に感染症予防について学び、感染のメカニズムや政治・経済のあり方、そして新しい世界のスタンダードについての深い理解をもつことが大切である。本研究所では、そうした教育目標を達成するために、教育界のみならず、経済界、医療関係者、地方自治体などと連携を取りながら、子どもたちの心と命を守るための実践的で学際的な研究を推進していくことを基本理念とする。

現状認識

 わが国ではすでに周知の通り、感染症を予防するために、非常事態宣言が出ても国民に罰則を伴う国からの命令を出すのではなく、国民の道徳観や倫理観に訴えて、国民一人ひとりの賢明な判断力と持続的な行動力に期待して、国や知事からの要請に基づいて感染症の収束に至らしめるプロセスを実施することが世界的に類を見ない最大の特徴になっている。
 そのプロセスを効果的に実施できるようにするためには、ひとえに教育の力に期待するところが大きい。罰則規定による強制力ではなく、自由で民主的な社会を維持しながら国民の自発的で自律的な道徳的実践力の発現を求めるわが国の感染症対策と予防の手法は、今後ワクチンや治療薬が完成したとしても、日本の学校での感染症予防教育を確立していくことを不可欠としているといえるだろう。それは、世界に誇れる日本の感染予防スタンダードになることをめざしていく営みでもある。

カリキュラム・フレームワーク

 小学校の高学年を一例として、感染症予防教育のための教科等横断的なプロジェクト学習を構想したい。それぞれの教科・領域の単元名は以下のようになるだろう。感染症予防についてアクティブ・ラーニングを通して考え、子どもたちが自分と友だちの心と命を守り、できることから実践するための新しい学習のあり方を提案するものである。
 
【総合】 「感染症から身を守る私たちの衛生プロジェクト」
【国語】 「感染症の防止法を提案する文章を書こう!」
【算数】 「感染症発生件数をヒストグラムにして考えよう!
      〜緊急事態宣言は遅すぎた?」
【社会】 「ミニディベート〜なんのための法律と罰則か?」
【保健】 「身の回りの衛生とは〜日本の感染者数はなぜ少ない?」
【家庭】 「食の安全と調理における衛生の基本」
【特活】 「感染症を防ぐ衛生習慣を考え実践しよう!」
【道徳】 「感染症で起きるいじめを防ぐには〜私たちの生き方探し」

連携

 感染症予防教育は、まだ理論構築も実践の蓄積もほとんどない新しい教育テーマである。この理念に共感してくださる方々の叡智を結集して、未来社会を生きる子どもたちの感染症予防力の育成に効果的な教育のあり方をともに開発していきたいと願っている。